便座交換のDIYは、費用を節約できる魅力的な選択肢ですが、全てのケースで推奨されるわけではありません。中には、安易に手を出した結果、かえって事態を悪化させ、より高額な修理費用が必要になってしまう危険なケースも存在します。DIYに挑戦する前に、まずは冷静に状況を分析し、「プロに任せるべきケース」に該当しないかを見極めることが、賢明な判断と言えるでしょう。まず、最も明確な判断基準は、「電気工事が伴う可能性がある場合」です。例えば、これまでウォシュレットが設置されていなかったトイレに、新しくコンセントを増設する必要がある場合、これは「電気工事士」という国家資格を持つ専門家でなければ、法律で作業することが禁じられています。感電や火災のリスクが非常に高いため、絶対に素人工事は行ってはいけません。次に、「水道の配管に不安がある場合」も、プロに任せるべきです。トイレの止水栓や、壁から出ている給水管が、明らかに錆びていたり、腐食していたりする場合、下手に触れると、作業中に配管が折れてしまい、水が噴き出すという大惨事につながる可能性があります。また、止水栓が固着して全く回らない、あるいは、止水栓を閉めても水が完全に止まらない、といった場合も、個人での対処は危険です。プロであれば、状況を的確に判断し、必要であれば家全体の大元の元栓を閉めるなど、安全な手順で作業を進めることができます。さらに、「既存の便座が、特殊な方法で固定されている、または完全に固着している場合」も、DIYの限界を超えている可能性があります。一体型のトイレや、デザイン性の高い海外製の便器などは、専用の工具や知識がなければ、そもそも取り外すことすら困難です。無理に力を加えて便器本体を破損させてしまえば、便座交換どころの話ではなくなってしまいます。そして、最後に最も重要なのが、「作業に少しでも自信がない、不安を感じる」場合です。インターネットの記事や動画を見て、何となくできそうだと思っても、実際にやってみると、予期せぬトラブルはつきものです。その一つ一つに冷静に対処する自信がないのであれば、無理は禁物です。DIYの失敗は、節約したはずの数万円を、はるかに上回る損害へと変えてしまうリスクを、常にはらんでいるのです。