便器交換の鍵を握るトイレ排水管の排水芯構造
トイレの便器を新しいものに交換しようと考えた時、多くの人は最新の機能やデザイン、節水性能に注目します。しかし、それらを選ぶ以前に必ず確認しなければならない、排水管の構造に関わる重要な寸法があります。それが「排水芯」と呼ばれるものです。この一見専門的に聞こえる数値こそ、新しい便器が自宅のトイレに問題なく設置できるかどうかを決定づける、極めて重要な要素なのです。 排水芯とは、排水管の位置を示す寸法のことです。最も一般的な床排水タイプのトイレの場合、「便器背面の壁から、床にある排水管の中心までの距離」を指します。例えば、壁から管の中心までが二百ミリメートル離れていれば、そのトイレの排水芯は二百ミリメートルということになります。一方、マンションなどで見られる壁排水タイプの場合は、「床面から、壁にある排水管の中心までの高さ」が排水芯となります。この寸法は、いわば既存の配管と新しい便器を繋ぐための「住所」のようなもので、これが一致しなければ物理的に接続することができません。 もし、自宅の排水芯の寸法を考慮せずに便器を購入してしまうと、取り付け工事の段階で設置できないという事態に陥ります。近年では、多少のズレであれば調整可能な「リフォーム用アジャスター」という便利な部材も存在しますが、これを使用すると配管の曲がる箇所が増え、水の流れがわずかに悪くなる可能性も指摘されています。また、便器が予定よりも壁から離れてしまい、後ろに不自然な隙間ができてしまうこともあります。トイレ交換をスムーズに進め、将来的なトラブルを避けるためにも、まずはメジャーを手に取り、自宅の排水管の構造、つまり排水芯の寸法を正確に把握することから始めるのが賢明な第一歩と言えるでしょう。